เข้าสู่ระบบ村の広場。
トウマたちは木製のベンチに並んで腰掛けていた。
ゲーム内は昼間であり太陽が出ている。近くにある桜の木が花々を満開に咲き誇らせていた。そよ風が吹いて、花びらがチラチラと地面を舞う。木枝が揺れる音がした。
大きめの梅おにぎりを、ウミが両手で持ってむしゃむしゃと食べている。モフモフと尻尾を振っており、ご機嫌のようだ。満面の笑みを浮かべている。
「美味しいですぅ、美味しいですぅ」
「そりゃあ良かった」
「ご主人様、ありがとうございます」
「味わって食えよ」
梅おにぎり、200ヴァル。
道具屋で買ってきたものだった。手痛い出費である。
トウマは広場の光景を眺めた。中心には噴水がある。女神像が肩にかつぐ壺から水が流れていた。水しぶきに虹がかかっている。
無駄に綺麗だな。
……この世界、見た目だけは優しい。
「トウマ」
「何だ?」
「綺麗ですね」
「噴水のことか?」
「はぁい」
「そうだな」
辺りには他プレイヤーたちがちらほらといて、お互いの同伴者と会話をしていた。それらの顔色はどんよりとしたものである。
「……食べ物を寄越せよ」
どこかで、かすれた声がした。
ドキッとして、トウマは両腕を胸に組んで警戒する。遠くにいる男の視線が――ウミのおにぎりに張り付いている。
ヴァルに困っているのは想像がつく。
だけど、このゲームはそんなに難易度が高いのか?
トウマは気づいた。人々は武器を持っているのだが、防具は装着していない。
疑問に思い、ステータス画面を出してチェックをした。
そこで理解する。
このゲームには防具が無い。
代わりに服が、防具としての機能を果たしている。
服の魅力が高いほど防御力も高いようだ。
ふと知らない女性プレイヤーが歩いてきてトウマに声をかけた。
「こんにちは!」
「ん? ああ、こんにちは」
ステータス画面からトウマは顔を上げる。
その女性プレイヤーは質の良い青いケープを羽織っている。初心者では無さそうだ。
「君君、もしかして初心者さん? もうギルドには入っているの?」
「いや、まだだが」
「そうなんだ。良かったらうちのギルドに入らない? 初心者さんなら、私たちはクエスト情報を提供できるから、良い話だと思うけど?」
女性プレイヤーの視線はトウマではなく、ウミを値踏みしているようにも見えた。
トウマは左手をあごに当てる。
ここは慎重に選ぶべきだろう。
あごから左手を離した。
「いや、今は入る気が無いんだ」
「ふーん、それはどうしてなの?」
「このゲームに慣れてから入ろうと思っている」
「そっか。じゃあ良かったら、ゲームに慣れた頃合いに連絡してよ。フレンド登録しても良い?」
「ああ、いいぞ」
「ありがとう」
女性プレイヤーとトウマはフレンド登録を交わす。
「うちのギルドはメルヴィローナって言うんだ。良かったら検討してみてね」
「分かった」
「またね!」
手を振って、女性プレイヤーはまた違うプレイヤーの元へと歩いて行った。
勧誘を引き続き行うようである。
次のプレイヤーにも彼女は同じ言葉をかけていた。
(初心者を囲って、使う側か?)
いや、善良な人である可能性を否定はできない。
トウマはため息をつきつつ、隣のウミの顔を眺める。
すでに梅おにぎりを食べ終えており、ウミの顔はきょとんとしていた。ほっぺたに米粒がついている。
「ご主人様、どうしてギルドに入らなかったのです?」
「弱いギルドだったら困るからな。稼げない」
「稼げないかもしれませんが、一緒に成長していく楽しさはありますよ?」
「楽しさでは食えん」
「でも、みんなで助け合えば……」
「助け合えば報酬を分けなければいけない。それじゃあ効率が悪い」
「効率ってそんなに大事ですか?」
「人生は効率だ。それよりウミ、ほっぺに米粒がついているぞ」
「え、あ!」
ウミがほっぺたの米粒をつまみ口に入れた。頬を赤くして恥ずかしそうにする。
「もっと行儀良く食べろ」
「これは! ケアレスミスですぅ」
「不注意だな」
「うー」
うなり声を上げるウミを尻目に、トウマは立ち上がった。
「とりあえず、飯を食ったのなら行くぞ」
「あ、はぁい。ご馳走様でした!」
ウミはステータス画面を出してチェックしている。トウマが覗き込むと、満腹度は60%以上に回復していた。
「今度こそ狩りに行くぞ」
「あ、はい。お願いします」
地面に足をつけるウミ。
並んで歩き出す。
広場を出て、村の北出口へと向かった。二つの規則的な足音が響く。
トウマの持ち金、現在320ヴァル。
……あと一食食べたら、底が見える。
グラスオース号が出航する。 アストラブール町で購入したばかりの船だった。 波しぶきを立てて、大海原へと船が進んでいた。魔導具のエンジンがゴゴゴと低い音を立てている。太陽の光に照らされて海面がキラキラと光っていた。カモメたちがクエーと鳴いている。まるでこれからの旅を祝福してくれているかのようだ。潮の香りがやけに濃かった。そして風が強い。 操舵士であるNPCのおやじさんが船の舵を切ってくれている。ジャンクアイランドへの航海マップは渡してあった。 そしてこれは余談だが、王都のある大陸へ行く際の航海マップは、おやじさんがすでに所持しているらしい。 船の名前にはギルドの名前がそのまま付けられていた。先ほどみんなで決めたことである。:行けー、グラスオース号w:目指すはジャンクアイランドですね。:ウミちゃぁぁん、いま行くから待っていてね。 船の前甲板の欄干に背中を預けてトウマは座っていた。その手にはアビリティの書がある。電子思念体を倒した時に入手したものだった。隣にはベルフラウがいる。 二人の服装は結婚式の正装から元に戻っていた。 今、トウマがアビリティを習得しようとしている。「なあ、ベルフラウ。本当に無料で、俺がこれを使ってもいいのか?」「いいのよ。だって、電子思念体を倒したのはトウマだし。あたしは指輪をもらっているから。それに、あたしはアビリティをもう覚えているし」「そうか。じゃあ、使うぞ?」「どうぞ?」「ありがとう」 トウマはステータス画面を見て、キーワードをつぶやく。「アビリティ解放」 金色のカバーの分厚い本が白い光を帯びて消える。アビリティを習得した。ステータス画面で能力をチェックする。 アビリティ、スイッチヒットポイント……HPが50%以下になると次の被弾時に相手のHPと自分のHPが入れ替わる。 アビリティ必殺技、フィールドクラック……ヴァルを消費してフィールドにご都合主義を
「ああ、知っている」 電子思念体が抑揚のない声で告げた。無機質な電子音である。 どこまでも白い空間だった。天井や壁はない。硬い床の感触だけがあった。後ろには白い扉がある。そして目の前には赤い球体、電子思念体が浮かんでいた。 トウマが急いた声で尋ねる。「ウミを生き返す方法を知っているのか?」「知りたいか?」「教えてくれ!」「このゲームの情報はヴァルだ。トウマよ、私にいくら払える?」「……何?」 トウマの眉が困ったように八の字になる。(またヴァルか!) クソゲーである。 ベルフラウが不安そうな顔を向けた。「ユウマ、どうするの?」 トウマは静かにあごを引く。「1000万ヴァルだ」「ちょっと、ユウマ! そんなにいいの?」「かまわん。ウミを生き返す方法が分かるのなら、安いもんだ」 ベルフラウは黙り込み、渋い表情で赤い球体を睨みつけた。 赤い球体が試すように聞く。「トウマよ、1000万ヴァルを払うのだな?」「ああ」「したたかな男だな。その金は、いま私を倒して入手した金だろう」「……足りないか?」「いや、いいだろう。では1000万ヴァルをもらっておく」 瞬間、トウマのステータス画面が自動で表示された。アイテム欄から1000万ヴァルが差し引かれる。トウマは腹が痛くなり、苦渋の表情を浮かべた。下唇がひきつる。 だけど、(ウミの存在は、金には変えられん)「おい、教えてくれ」「ではこれをやろう。お前たち、ジャンクアイランドへ行け」 赤い球体の手前の床が光った。一枚の羊皮紙が生まれる。 トウマは歩み寄り、その羊皮紙を拾った。「これは?」「ジャンクアイランドへの航海マップだ」「航海マ
ひたすらに白い空間が広がっていた。 天井や壁は無い。床の感触だけはあった。白い床の先に、軽自動車ほどのサイズの赤い球体が浮かんでいる。HPMPバーがあった。名前は……電子思念体。 ステータス画面からトウマはブラウンのステッキを取り出す。 ベルフラウも腰のベルトからダガーを両手に取った。(あれがボスか?) トウマの目が鋭くなる。 ベルフラウが静かに呼んだ。「ユウマ」「ああ、行ってみよう」 赤い球体に二人は近づいて行く。 ドンと音が鳴った。【制限時間、2:00】 頭上に表示されたタイマーが動き始める。どうやらこのボスを倒すまでには制限時間があるらしい。しかもたったの二分だった。 ベルフラウが頭上を見上げて焦ったようにつぶやく。「ユウマ、このタイマーって」「おそらく、二分が経過したら、負けということだろうな」「じゃあ早く倒さないと」「ああ!」 ベルフラウが右手を掲げて唱える。「メイクアップ」 小さな可愛い手鏡が生まれる。虹色の光がベルフラウの化粧のノリを上昇させた。彼女が走り出す。「行くわ!」 ベルフラウが近づくと、赤い球体の表面には×5という文字が浮かんだ。 トウマは立ち止まって凝視する。「何だ?」 ×5、という文字は何を意味しているのだろうか? ベルフラウが赤い球体を斬りつける。「ふっ!」 身体を回転させてダガーの連続攻撃を叩き込んだ。初撃はHPが少し減った。だが、攻撃を浴びせるたびに与えるダメージが少なくなっていく。「ちょっと、硬すぎるわ!」 ベルフラウが顔をしかめている。 トウマは赤い球体の表面に表示されている文字に着目した。 ×5の文字は、いま×1に変わっていた。
とても小さな結婚式だった。 客は少なく、そのせいで賑やかではない。 だけど、これでいい。(俺たちには、お似合いだよな) なあ、ウミ。 そう思うだろ? ラグナシアの教会、その大聖堂チャペルには厳かなオルガンのメロディーが流れている。シスターの一人が演奏をしてくれていた。長机に挟まれた中央の通路には、真っ赤なヴァージンロードが敷かれている。一番前の席の右手にいるのはニキとキャルル丸、左手には晴恋とアイギスが立っていた。晴恋の一つ後ろの席にはシスターが一人。その隣には町長のティオとその使用人がいた。そして、講壇の奥には牧師のおじさんがいる。 配信ドローンは入室不可だった。 チャペルの入り口にはトウマとベルフラウが肩を並べていた。今、ゆっくりゆっくりと歩き出す。トウマはパリッとしたタキシードを着ており、ベルフラウは可憐なウェディングドレス姿だった。二人の薬指には結婚指輪がはまっている。ベルフラウは婚約指輪もつけていた。 見ると、仲間たちは誰もが笑顔を浮かべていた。 祝福してくれている。 胸に熱い気持ちが溢れた。 涙がこぼれそうになる。 ウミ、(お前も天国で笑っているか?) やがて、講壇の前にたどり着く。 オルガンの音が止まった。 ふくよかな牧師のおじさんが両手を握り合わせて、お決まりのセリフをよどみなく喋った。「……健やかなる時も、病める時も、愛を誓いますか?」 トウマとベルフラウは同時に頷く。「「誓います」」「それでは、誓いのキスを」 ベルフラウとのこれまでの思い出と旅が脳裏に浮かびあがった。 幼い頃から近所同士の付き合いである。 一緒に遊んで、勉強をして、笑ったり泣いたりを共にして育った。 トウマの姉、千景の死。 あの時から、彼女を女性として意識するようになった。 小中高共に同じ学校で。
プロポーズをしたかった。 あれから、何度かログアウトをした。 トウマはいま、ルスプルの宝石店に来ている。 朝方だった。だけど店は営業していた。このゲームの店は全て24時間営業である。外では雨が上がり、スズメがちゅんちゅんと鳴いて散歩をしていた。 直方体の店は小綺麗な室内だった。白い床に白い壁。天井には魔導具の照明が光っている。ガラスケースの中にあるのは、宝石のついた装飾品だ。指輪、ネックレス、イヤリング、様々なものがある。ダイヤモンド、ルビー、サファイア、どれも高級そうだ。 トウマはステータス画面のヴァル残高を確認しながら物色した。 婚約指輪と結婚指輪の両方を買うつもりである。 寝ているベルフラウの指をトウマはこっそりと測っていた。細長い紙と定規を使ったのである。8号だった。 お互いがつける結婚指輪は、プラチナ製の50万ヴァルのものに決めていた。二つ合わせて100万ヴァルである。 だけど、婚約指輪はどれにすれば良いだろうか? ベルフラウの好きな宝石は聞いたことがなかった。だが、ダイヤモンドをプレゼントすれば間違いはないだろう。 残された問題はカラットである。 デカければデカいほどに値段が上がる。 トウマの視線の先には、一際光り輝くダイヤモンドの指輪があった。 5カラット……500万ヴァル。(高すぎる!) 円に直せば100万円である。 致命救済の装備効果もあるらしい。 だけど、馬鹿馬鹿しいとはこのことだった。 トウマは視線を移動させて、他の指輪を確かめる。カラットが一つずつ小さくなるにつれて、100万ヴァルずつ値段が落ちるようだ。 ステータス画面と指輪の値札をちらちらと見比べる。 そして思い悩んだ。 効率から考えれば、1カラットを買うべきだろう。 だが、それでいいのか? 結婚イベントは一回きりである。 いや、現実を含めれば二回あるのではある
夜。 もう我慢できないわ。 未だにルスプルのカジノにいた。照明が室内を華やかに照らしている。スロットの賑やかな音がうるさくて耳がおかしくなりそうだった。だけどそんなことはどうでもいい。 恋人のトウマはスロットにまだのめり込んでいる。一日中プレイしていた。とても鼻息が荒く、目はうつろである。スロットのレバーを引くこととボタンを押すこと以外に興味が無いようだった。 スリーセヴンは一度も無かった。(もういい加減にして):トウマさん、まだスロットやっているし……。:配信を見ているこっちの身にもなってくれ。:違う配信行きますね。 ベルフラウは覚悟を決めた。 トウマの肩をぽんぽんと叩く。 彼が煩わしそうに振り返った。「何だ? 真帆。今、良いところなんだが」「ねえ、ダーリン。実はね、もっと効率良くヴァルを稼ぐ方法があるの」「何だと? ……嘘をつくな。カジノこそが至上だ」「違うわ。ダーリンが知らないだけなのよ。本当に、もっと簡単にお金を稼げるのよ」「……マジか? どんな方法だ? 言ってみろ」「ついてきなさい」 ベルフラウは歩き出す。 だけどトウマは立ち上がらなかった。舌なめずりをしてスロットのレバーをまた引く。 ベルフラウはまたトウマのそばに戻り、その頭をぶっ叩いた。「早くついてきなさい!」「痛っ! 何だお前。殴ることないだろ」「ほら、早くコインを換金してきなさい!」 トウマは舌打ちをした。「……良いところだったのに」 彼がコインのケースを持って交換所のカウンターへと向かう。そこでコインをヴァルに交換した。50000ヴァルほどを入手している。これなら、ラグナシアでバフ料理を売った方が断然稼げると思った。 二人でカジノを出る。
ついに邪蛇狩りが始まった。 満天の空の下。山の上の地面の土は硬く、背の低い雑草が絨毯のように生えている。トウマとウミは、大きな岩の後ろに隠れて山頂の様子を見守っていた。今までずっと登山して来たのだ。 ちなみに先ほど夕食を食べた。昼と同じカレーライスである。もう飽きた。 山頂にはキャンプファイヤーが焚かれているようで、その煙がモクモクと上がっている。炎の灯りに照らされて、人々の戦う様子がよく見えた。 邪蛇、グランツエル。そいつは紫色に輝く肌をした大蛇であり、電車一両ぶんほどのサイズがありそうだ。まるで龍のように美しい。右に左にうねって地面を這い、人々に襲いかかる。 人々の先頭にいる
森の道へと入った。 木の葉からこぼれる太陽の日ざし。茶色い小鳥が木枝から飛び立った。落ち葉の多い地面。空気は澄んでおり、森林浴にはもってこいだ。 森の奥へとウミはどこまでも逃げて行く。その背中をテラーウルフが追いかける。そのまた後ろをトウマが追跡するという構図だ。 可愛いは正義勢:ウミちゃん逃げて! 古参ニキ:死んだと思ったらまだ生きてる。 開けた大地にたどり着くとトウマは唱えた。安っぽい木の杖を構える。 「グラヴィティライン」 トウマの杖から青黒いロープが伸びた。テラーウルフの足に巻き付いて拘束する。 「がうばうっ!」 走っていたテラーウルフは前のめりに
草原の中心に、黒い渦を巻いてテラーウルフが出現する。残忍な顔つき、漆黒の体毛、巨大な白い牙。その圧倒的な存在感に、トウマの背筋から冷や汗が伝った。 テラーウルフが高々と吠える。 「ガアルルルゥゥッ!」 ドンと音がして空中に文字が表示された。 ――クエスト、テラーウルフの撃破 「ボスだ、逃げろ!」「俺は死ぬ訳に行かないんだー!」「私はせっかくレベル3に上がったんだからね!」 ウミがすぐに反応した。その表情は恐怖に彩られており、モフモフとした尻尾がピンと立っている。勢いよくこちらを振り向いた。 「ご主人様、どうすれば!?」「ウミ、動くな」 トウマは状況を冷静に分析する
村の北出口から外へと出る。 草原地帯があった。ところどころには岩がある。そこにいる魔物はフェアウルフの一種類。灰色の毛並みをした狼であり鋭い牙を誇っている。大型犬ほどのサイズだ。 狩りをしているプレイヤー数は多く、必死の形相でモンスターと戦っていた。 「俺の、俺の宿代をー!」「私はまだ朝食も食べていないんだからね!」「や、やべえやべえ、こいつら強えぞ!」 トウマは顔をしかめた。このゲームのプレイヤーはみんな無職なのだろうか? 分からない。(そう言えば、俺も朝食を食っていない) ドンと音がして、頭上に文字が表示された。 ――クエスト、フェアウルフの撃破 隣にいるウミ







